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「きゃ~~~!!!!落ちる落ちる落ちる!!!!」
いきなり、自分の頭上から人間が降ってきた。
「ルックイータのばかぁー!!!!」
やけに甲高い声に耳がキーンとした。
と、同時にぼしゃん!と大きな音を立てて、その人間は白く濁った水の中へダイブした。
私がぽかんとその様子を見ていると、その人間は顔を湖から出して手足をバタバタさせた。
「ちょっと!そこのアンタ!」
高い声に、いちいちびっくりする。
アンタと言われて、自分の事だと理解し、船から恐る恐る身を乗り出した。
「見てないで、助けなさいよっ!
溺れてる女の子が居るのよ!?」
「えっと……」
思えば私は、博士くらいしかまともに話した事がない事に気づいた。
なんて言おうか思案していると、その人間は白い湖の中へ引き込まれていく。
私は飛び込もうか迷った。
船は自動的に城へ進んで行くし、私は泳いだ事もなかったから飛び込んだ所で、その人間を助けられるかも怪しい。
何より、博士やルックイータ以外の人物に接触する事がためらう原因のひとつだった。
「……んのっ、役立たず!!!」
その人間の言葉に、私は正直カチンと来た。
博士の助手だという事に誇りを持っていた私のプライドが許さなかった。
私は湖に飛び込むと、がむしゃらにめちゃくちゃに泳いで、その人間の元へ行こうとした。
だが、何かの重力なのか魔法なのか、白い水は私の体を深く沈ませていく。
「………っ!」
必死で息をしながら、もがくものの無意味な抵抗だった。
目の前の人間はもう沈んでいる。
私はなんとか大きく息を吸い込むと、沈みゆく人間に手を伸ばした。
金色の髪が、白く濁った水の中でも光輝いている。
その人間と目が合う。
その瞬間に、何かのピースがかっちりとハマったように感じた。
黄金の瞳。煌めく太陽のように明るい輝き。
私は目が離せなかった。
そして、その人間の手を掴んだ瞬間、私の意識は遠のき、目の前が暗闇に変わった。
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