黄金の姫君

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それからの生活は、味気ないものだった。 食べるものや、読む本には不自由はしない。 だが、毎日毎日博士のそばで数式を解いたり、博士の実験をやったり。 ルックイータが、あの人を不快にするにんまりとした顔で、ひょっこり顔を出しては私の読書の邪魔をする事もない。 あの気の強い妖精ボボルに腰抜けだと叩かれる事もない。 降り注ぐ太陽の光はあるのに、この無機質な城の窓からの光はまた無機質だ。 木々の爽やかな匂い、動物の気配、小鳥たちの歌。 風に吹かれ、あの大きな白樺の木の下で昼寝をする事も出来ない。 毎日を、ただ淡々と過ごす。 シュラが私をこの城に閉じ込めたのは、失敗なのではないかと思えた。 私は、外に出たかった。 ルックイータの言う街へ行ってみたいとも思った。 博士の住むチルチラの森にも帰りたい。 そして…… 私を役立たずと呼んだ、甲高い声の人間にもう一度会ってみたい。 私とは全く違う金色に輝く髪。瞳は白く暗く濁る中で光のごとくキラキラして。 私より一回りも小さい人間。私よりも年下なのかもしれない。 とにかく、私は会話がしたかった。 この鬱蒼とした森に囲まれた城にうんざりしていた。 チャンスはすぐにやってきた。 シュラが1日城を開けるという。 私が全く城から出る気配すら見せないからか、安心したらしい。 「城の外へは出るなよ。分かっているな」 「はい」 私が頷くと、シュラは身を翻してみるみるうちに私の目の前で姿を消した。 私は城から出る手段はないかと思案した。 城の中は、シュラの魔法によって窓、扉全てがぴたりと閉じられていて私一人では決して開かなかった。 唯一外に出る方法は、城の東の塔の一番上の階…屋上みたいになっている、もしくは西の塔へ向かう時には一度外へ出なくてはならず、そこの扉だけは魔法が効かないのか開け放たれたままになっていた。 西の塔はそれよりも強力な魔法が働いているのだろう。 私は西の塔に向かう事にした。 東の塔の屋上へは何度も行っていたため、あの塔からでは景色を見るのがやっと。 とても城を抜け出せる隙はなかった。 城の長い回廊を歩き、西の塔へ続く扉を開けた。 キィ……という音がして、暗くのぼる階段が目の前に現れた。 埃臭く、湿っていてどんよりと辛気くさい。 私が、階段をのぼろうと足を踏み入れた時、 「どいてどいてー!」 聞いた事のある甲高い声が頭上からし、見上げたと同時に、何かに押し倒された。
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