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「あら、何を勘違いしてらっしゃるのかしら?
私はまず第一に男ではないわよ」
メテリアーナは金色の髪をふわっとなぞった。
「こんなに女性らしい男性が居るなら見てみたいものだけど。
そして第2に、私はご飯ならたくさん食べているわ。
華奢なのは、私が男ではないからよ。
そして、第3!
私は子供じゃないわ。今日で13才なのよ」
メテリアーナはじっと私の瞳を覗いたままだ。
「………嘘だろ?」
長い沈黙のあと、私から出てきた言葉はこれしかなかった。
この世の中に女という人間が居る事は知っていた。
だが、今まで一度も会った事がなかった私は、女という人間はいつしか本の中の登場人物にしか思っていなかったのだ。
「何も知らないのね?
助けてくれたお礼に、色んな事教えてあげるわ。
私、教養はあるのよ」
「私もだ。様々な事を勉強してきた。
だが……その、女性に会ったのは初めてで、凄く驚いている」
今度はメテリアーナが驚く番だった。
「えっ、あなた……お母様は?」
「私は生まれてすぐに棄てられた」
メテリアーナははっとして瞳を伏せた。
「ごめんなさい、無神経な事を」
私は微笑んだ。
「いや、構わないよ。聞かれて傷つくような事は何もない」
メテリアーナは私の微笑みに、頬を赤くして下を向いた。
「メテリアーナ?」
「いえ、それではあなたはどうやって生活してらっしゃったの?」
「森で、博士と2人で住んでいた。
君が最初に降ってきた時、ルックイータの名を口にしてたね」
「ええ、ルックイータをご存知なの?」
私は頷いた。
「人が苛立つように、にんまりと笑うピエロだろ?」
メテリアーナがはじけるように笑った。
「ええ、そうよ!
私は、彼の森の抜け道を通って、たびたび森の国に来るの。」
「君は森の国の住人ではないの?」
「違うわ。水の国よ」
水の国……世界で唯一の女性が統べる神秘の国。
水の中にある国だ。
「ルックイータは気まぐれだから、森の国に来る時にとんでもない場所に飛ばす事があるのよ。
だから、この間も……」
「シュラに助けられなければ、君も私も命はなかった」
メテリアーナは私に微笑んだ。
「シュラはね、私を見捨てる事はしないのよ」
「君が、この世界で必要な人間だから?」
「それもあるにはあるけれど、私達の血族はシュラに愛されているからよ」
「理由があるのかい?」
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