黄金の姫君

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「シュラは水の国の最初の王女、シルリアと恋仲になり、子を生ませているの。 だから私はシュラの血筋を引いてるの」 「という事は、君は……王族かい?」 「あっ」 メテリアーナはしまったと言うように口を手で覆った。 その仕草が無防備で、可愛いらしく、私は思わず吹き出してしまう。 「笑ったわね!」 「そうか……君は、可愛いらしいんだな」 メテリアーナは顔を真っ赤にした。 「可愛いらしいって!子供扱いしないで! そういうあなたはいくつなのよ!?」 「13才だよ。君と同じ」 メテリアーナは勝ち誇った顔で得意気に笑った。 「私が子供なら、あなただって子供じゃない」 「私は子供扱いされた事は生まれてこのかたない」 「老け顔だものね」 つんとメテリアーナが言う。 「老け顔?私と同じ年頃の男の顔は、君みたいに幼いのか?」 私が真面目に質問すると、メテリアーナは困った顔をした。 「やぁねぇ。今のは皮肉だったのに。 あなたといると調子が狂うわ」 「私と同じ年の男は、君のようにほっそりとしてるのか?」 急に、私以外の生身の人間に興味が湧いた。 私が続けて質問すると、メテリアーナは仕方ないというように真面目な顔になった。 「大人びた顔もいれば、幼い顔つきもいるわ。 体つきも、太っていたり痩せていたりと様々よ。 あなた、博士以外の人間を見た事がないの?」 「たまに城から来る従者を除き、人間というくくりで言うなら、君がその初めての人間だよ」 メテリアーナは納得したようだった。 「分かったわ。どうりであなた……変わっているのね。 ねぇ、今度私の国においでなさいよ」 「水の国に?」 メテリアーナは頷いた。 「そう。あなたを水の国は歓迎するわ」 私はなんて答えようか迷った。 「でも、私はこの城から出られないんだ」 「あなたの目は節穴?私が先程、西の塔の上から降ってきたのが見えなかったの?」 メテリアーナはくすくすと笑った。 「私は入ってはならない決まりになっている」 「あなた一人ではね。確かに危険だわ」 メテリアーナは立ち上がって、私に手を差し伸べた。 「この塔はね、魔力が働いていて…とても古い太古の魔力よ。 魔法が使える者以外が出入りするのは危険なのよ。 どこに飛ばされるか分からないんだもの。 魔法が使えれば、どこに飛ばされたいのかコントロール出来るけれどね」
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