金の卵、海の記憶

4/20
前へ
/48ページ
次へ
どれくらい、待っただろうか。 この無限に広がる宇宙の中ではもう読書をする気にもなれず、足元にも浮かぶ星々の中、私はただ呆然と星を眺めていた。 不思議な気持ちだった。 落ち着くような、それでいて少し肌寂しい気持ち。 孤独を一心に受けるような……もしかしたら、シュラの見ている世界はこの世界なのかもしれない…とぼんやり思った。 だんだんと眠くなり、私は壁に頭をもたげて座ったまま瞼を閉じた時だった。 トン という足音が響く。心臓が跳ね上がって、私は立ち上がった。 ランタンを持って、上を見上げる。 トン、トン……トン 上から、誰かが降りてくる音。 心臓が緊張でバクバクとはね上がった。 ランタンを持つ手が震える。 目の前に広がる宇宙の中、くらくら目眩がしながら、足音の者を待つ。 やがて、足元が見えた。 白い靴。細い足首。 「メテリアーナ……!?」 思わず口に出すと、足が止まった。 息を呑む音が聞こえたかと、パタパタと駆け足で降りてくる。 慌てたように、足を踏み外さないか不安になるほどの早足で。 ひざ下丈の青いシフォンのワンピースがふんわりと揺れる。 宇宙の中光輝く金色の髪。 「メテリアーナっ……」 思わず階段を駆け上がり、メテリアーナに向かって両手を出す。 強烈に輝く金色の瞳が私を捉えると、その唇が微笑みに変わった。 「イムナス!」 メテリアーナは何もためらう事なく、階段を降りきる前に私に向かって階段を飛び越えてきた。 耳に心地良い、高い艶やかな声。弾んだ息。 差し出した私の腕の中に、メテリアーナは飛び込んできた。 思わずぎゅっと抱きしめると、彼女も私の背中に両手を回して、ぎゅっと抱きしめてくれる。 潮の匂いと暖かな太陽の匂いが広がって、思わずメテリアーナの首筋に顔を埋めて思いきり息を吸い込んだ。 「夢じゃない?」 私が聞くと、メテリアーナは笑った。 体をゆっくりと離して、じっとメテリアーナを覗き込むと、メテリアーナの頬がりんご色に染まる。 「こんな美女が幻に見えるなんて、あなたの目は節穴?」 悪戯な瞳で私を見るメテリアーナの手を握った。 「いや……ごめん。その……」 言葉が見つからず、目を泳がすと、メテリアーナが笑った。 私の手を握り返して、言う。 「お帰りのキスは?」 「メ、メテリアー……」 「ね、キスして?」 こちらが返事をする前に唇を塞がれた。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加