金の卵、海の記憶

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どぎまぎしながら、メテリアーナの頬に触れて、軽く啄むようにキスをすると、 メテリアーナが笑った。 「イムナス……会いたかった」 「私もだよ」 至近距離で見つめ合う。そのメテリアーナの強い眼差しを受け止める。 体中がぽかぽかして、急に血の巡りが良くなったかのようだ。 「行きましょっ!」 「どこに……」 私の手を引いて、階段をのぼりだすメテリアーナに問うと、メテリアーナは振り返ってちょっとショックを受けた顔をした。 「どこにって……いやね。私との約束を忘れてしまったの?」 「まさか……水の国へ……?」 私がはっと目を見開くと、メテリアーナは私を誘惑するようなとびきり魅力的な瞳で微笑んだ。 「最高の1日になるわよ!」 ランタンと本を置いたまま、私はメテリアーナに導かれるまま階段をのぼった。 足元も目の前も、銀河に包まれて、この世界中で私とメテリアーナの二人きりになったかのような錯覚におそわれる。 私の見た事のない世界を見れると思うと、緊張と期待で心がひやひやしてる。 メテリアーナの青いシフォンワンピースが揺れる金色の髪によく映えて、眩しくて……思わず目を細めた。 後ろ姿なのに、その背中は芯が通っているかのようにしゃんとして、王女の威厳が垣間見えた。 と、彼女とは全く違いみすぼらしい灰色の服に、ボサボサの真っ黒い髪の自分が彼女と並んでも良いのかと……少し不安になる。 メテリアーナを光に例えるならば、私はどこまでも暗い陰だ。 私の心に、澄み渡る一筋の光。 眩しくて、眩しくて。 どうしようもなく……焦がれずにはいられない。 メテリアーナは階段の終わりまでのぼると、振り返って私の両手をぎゅっと握った。 「綺麗よね……銀河系」 瞳を閉じて、感覚を研ぎ澄ますように呟くメテリアーナ。 「ねぇ、人って亡くなると……星になるんだって」 私は驚いた。 「………星にかい?」 「そうよ。シュラはね……星の人なの。星の終わり、余生の人」 メテリアーナと自然に額をくっつける。 囁くような、メテリアーナの声。綿毛に耳をくすぐられているようで、くすぐったくも心地良い。 「西の塔のこの宇宙は、シュラの記憶よ。まだ、シュラが星だった頃の……。 変ね。いつも、私泣きそうになるのよ。 シュラの血を引いているからかしら?星の記憶を……海が持っているからかしら」
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