0人が本棚に入れています
本棚に追加
どぎまぎしながら、メテリアーナの頬に触れて、軽く啄むようにキスをすると、
メテリアーナが笑った。
「イムナス……会いたかった」
「私もだよ」
至近距離で見つめ合う。そのメテリアーナの強い眼差しを受け止める。
体中がぽかぽかして、急に血の巡りが良くなったかのようだ。
「行きましょっ!」
「どこに……」
私の手を引いて、階段をのぼりだすメテリアーナに問うと、メテリアーナは振り返ってちょっとショックを受けた顔をした。
「どこにって……いやね。私との約束を忘れてしまったの?」
「まさか……水の国へ……?」
私がはっと目を見開くと、メテリアーナは私を誘惑するようなとびきり魅力的な瞳で微笑んだ。
「最高の1日になるわよ!」
ランタンと本を置いたまま、私はメテリアーナに導かれるまま階段をのぼった。
足元も目の前も、銀河に包まれて、この世界中で私とメテリアーナの二人きりになったかのような錯覚におそわれる。
私の見た事のない世界を見れると思うと、緊張と期待で心がひやひやしてる。
メテリアーナの青いシフォンワンピースが揺れる金色の髪によく映えて、眩しくて……思わず目を細めた。
後ろ姿なのに、その背中は芯が通っているかのようにしゃんとして、王女の威厳が垣間見えた。
と、彼女とは全く違いみすぼらしい灰色の服に、ボサボサの真っ黒い髪の自分が彼女と並んでも良いのかと……少し不安になる。
メテリアーナを光に例えるならば、私はどこまでも暗い陰だ。
私の心に、澄み渡る一筋の光。
眩しくて、眩しくて。
どうしようもなく……焦がれずにはいられない。
メテリアーナは階段の終わりまでのぼると、振り返って私の両手をぎゅっと握った。
「綺麗よね……銀河系」
瞳を閉じて、感覚を研ぎ澄ますように呟くメテリアーナ。
「ねぇ、人って亡くなると……星になるんだって」
私は驚いた。
「………星にかい?」
「そうよ。シュラはね……星の人なの。星の終わり、余生の人」
メテリアーナと自然に額をくっつける。
囁くような、メテリアーナの声。綿毛に耳をくすぐられているようで、くすぐったくも心地良い。
「西の塔のこの宇宙は、シュラの記憶よ。まだ、シュラが星だった頃の……。
変ね。いつも、私泣きそうになるのよ。
シュラの血を引いているからかしら?星の記憶を……海が持っているからかしら」
最初のコメントを投稿しよう!