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それが故、元日蔭者の私が言うのもなんであるが、文化部およびサークルというのは視界の範囲外であった。だが、やはり元日蔭者の私がいきなり「えいやぁおー」なんて掛け声をかける体育会は脳を掠めもしなかった。
そこで私が目をつけたのは、緑の芝の上を跳ねる白球を、女子との間でラリーするソフトテニス同好会『しゃらぽあ』であった。名前からして雲中白鶴で、その身駆は程良く筋肉と脂肪で覆われた雅な美女がいるように思われてならなかった。
今にして思えば頭の悪そうな名前である。
その頃の私は、ただ朗らかな男子と、艶やかな女子とで、豊かなキャンパスライフを送るだろうという期待に胸を膨らませ、捻くれるという字は私の辞書には載っていなかった。昔の私には、今の私の姿など都市伝説に近しい存在だったのである。まさか自分がキャンパスライフという都市伝説を信じているなど思いもよらず、今の私のようにあきらめの境地という都市伝説に含まれた人間を笑っていたのだからこっけいな話である。
だが、私に、現実という鋭い刃を突き付けたのは、一人の美女と、確かに可憐ではあるが認めたくない女の二人であった。
その二つの突き付けられた刃というのは、ずぶな大学生活初心者であった私から夢と希望を奪うには余りに鋭すぎた。鋭すぎて今後の生活にも支障をきたすのは予想にかたくなかった。とくに後者のは、それはそれはひどいものだった。最早死ね! ってなもんである。
前者というのは、しゃらぽあにおける、いわば中心的人物であった。台風の目である。そこで暮らすためには、目の中に入らないでは不可能に近く、立つのもままならない強風であったのだ。
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