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ミレルはさんさんと降り注ぐ太陽を見上げ、目を細めた。
なんて美しくのどかで、平和なのだろう…とミレルは思った。
じゃり道は延々と続いている。
ミレルはひたすら歩き続けた。
山に囲まれた田舎。村と呼べる程人も居ない。
田んぼと畑が辺り一面に広がっている。
民家は遠くにぽつりぽつりとあるくらいで、人一人歩いていない。
一時間程歩き続けていると、ミレルの目前に民家よりも大きな家が見えてきた。
人が10人はゆうに住めそうな、木の家。
赤い屋根。畑に囲まれて、かかしが不格好に立っていた。
家の近くでは、一人の少女が畑作業をしていたが、やがてミレルの姿に気づいて顔を上げると、その土のついた顔をほころばせた。
「ミレルさんっ……!」
黒髪のショートカット。さらさらの髪が揺れてミレルに走り寄った。
その大きな瞳はキラキラとミレルを見ている。
まだ10代前半の幼い少女だった。
ミレルは自然と顔が笑顔になった。
「レイナ…久しぶり。また背が高くなったのね」
「はい!もりもりご飯食べていますからっ!」
元気いっぱいに頷くレイナの頭を撫でると、レイナは嬉しそうに笑ってみせた。
「今年でいくつになったの?」
「10才です。もう大人ですよ!」
「まだ子供じゃない」
「いいえ!もう、大人ですともっ」
レイナが胸を張って答えると、ミレルが吹き出した。
「はいはい。そうね」
「今年はレイトさんはいらっしゃらないのですか」
レイナがミレルの腕を引っ張って歩き出した。
「彼は旅立ったのよ。だけど、来年はここに来ると約束してくれたわ」
レイナはそれを聞くと、少ししょんぼりとした。
「そうですか……じゃぁ来年まで、また1年待つ必要があるのですね」
「私じゃ役不足かしら?」
ミレルがからかうと、レイナはぶんぶんと首を横に振った。
「とんでもない!ミレルさんとレイトさんのおかげで、私達の住む家があるんですもの。
そればかりでなく、全員学校にも通わせてくださって。
感謝しかありません」
「タクトは元気にしてる?」
レイナは頷いた。
「はい、毎年ミレルお母様とレイトお父様がいらっしゃるのを心待ちにしていますよ。
あの子は無口ですが、とても賢い子です」
「今、家にはレイナだけ?」
「はい、みんな学校です。トーヤとセレナは働きに出ていますので、みんなが揃うのは夜です」
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