第1章 過去の敵を指宿で打つ

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「あっ、二人とも、こちらにいらしたんですか」  食堂に駆け込んでくる足音。入り口には、投手コーチの肥後が立っており、寺尾と大島を見据えている。  肥後は今年度からコーチに就任した一人である。現役時代は投手で、速球派として鳴らしたが怪我に泣かされた。昨年引退したばかり、28歳という若さだが、人望の厚さを買われての抜擢である。 「今から、北 総二がブルペンに入るそうです。先ほど、一つ前のメニューを終えました」 「ん、そうかい。ありがとう」 「私はブルペンで待っておりますので。それでは」  肥後は用件だけ告げると、あわただしく食堂を出ていく。 「いよいよ、ゴールデンルーキーがベールを脱ぎますね。楽しみです」 「そうだね。どんな球を投げるんだろう。やっぱり実際に見てみなきゃね」  寺尾は、空になった食器を盆に乗せ、返却口へ向かった。大島も、残っていた食物をすべて口に詰め込んでからそれに続く。
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