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「───皆さんのご期待に添えるよう頑張って行きますので、どうぞよろしくお願いします」
直樹は自らの熱意を、大きな声で、身ぶりを交えながら話した。時間にしたら、およそ二分くらいだっただろうか。
直木のスピーチが済むと、福田が最後に一言添えて、ミーティングを終了させる。
円陣を解いた選手たちは、今度は外野のフェンスに沿う形で並び、ライトスタンドを見上げる。
これから新人選手が、ファンに向けて自己紹介を行うのである。優希も直樹も経験した、キャンプ初日の恒例行事だ。
「直樹、お疲れ」
優希は真っ先に直樹の隣に並ぶと、労いの言葉をかけた。
「あぁ、ありがとう。めちゃくちゃ緊張したよ」
直樹は胸の辺りをさすりながら、力が抜けていくような声を上げた。ホッとしたのか、ヘニャッとした笑みを浮かべている。
「俺はやっぱり、言葉より態度で示すことにしたよ。しゃべるのは苦手だ。───それに、ついこの間まで、あっち側だったんだしな」
直樹が「あっち側」といって示した先には、今年度のルーキー達が、今まさに名乗りを上げようと準備をしていた。去年はあそこにいたのかと思うと、優希の中に、懐かしいながらも昨日のことのような、おかしな感情が沸き起こる。
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