第1章 過去の敵を指宿で打つ

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 優希がまず安心したのは、「全体練習にきちんと参加できること」である。  昨年は完全別メニューで、キャンプ序盤は笹嶋がマンツーマンで監視につき、箸も握れなくなるほどの筋力トレーニングを課された。それを思えば、今回はだいぶ楽な気分で臨める。  そしてもう一つ優希の気持ちを軽くしたのは、総二とは別のグループになったこと。こちらの要因のほうが、優希の緊張を解きほぐしたことは間違いない。  あんなことがあった後で、練習まで一緒になってはたまらない。グループは日替わりなのでいずれは一緒になるかもしれないが、今日のうちはその心配もなさそうだ。 「どうも、よろしくお願いします。頑張りましょう」  同じグループになった四人と合流し、挨拶を交わす。榎田と町田には頭を下げ、外国人の二人とはガッチリと握手をした。 「ここからはしっかり集中しないと……自分のことはしっかりやらなきゃ」  余計なことを考える時間は、もう終わっている。優希は首をポキリと鳴らして心を奮い立たせると、サブグラウンドに向けて足を踏み出した。
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