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「その『増資』っていうことについても、お尋ねしたかったのですが」
寺尾がそのことについて触れると、大島は何か思い出したように、茶碗を箸で叩いた。まだご飯が残る茶碗は、濁った音を立てる。
「今までどんなに求めても頑として財布のひもを緩めることはなかったのに、この期に及んでどうして増資なんかしたんでしょうか……? なにか不思議でならないのですが」
幕張オーシャンズの経営状況は、あまり芳しくないのが現状である。長引く低迷を理由に、親会社である古久保グループからの出資が減り続けているからだ。
これでは思い切って選手を補強することも、育成に力を入れることもできないという悪循環に陥り、現場の人間は何とも歯がゆい思いをしてきた。
もはやあきらめの境地に達した時に、急にやってきた増資の機会。喜びよりも先に不信感が先に出るのも無理はなかった。
「いやいや、ありがたい話じゃないか。支援してくれるなら、甘んじて受けるのが誠意というものだよ」
「それはそうかもしれませんが……でも、素直に喜べそうにないですよ。何か裏がありそうな気がして」
大島はへっへと笑い声を上げる。しかしその顔は、頬を突っ張ったような、まるで笑みを無理やり取って貼ったようなものだった。
寺尾は豚カツの乗った皿に視線を落としたまま、素っ気なく返答した。
「さあねぇ。どっかのお坊ちゃまの機嫌でもよかったんじゃない?」
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