第1章 過去の敵を指宿で打つ

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 オーシャンズでは、ランニング、ストレッチ、ダッシュまでのメニューをひとまとめにして、ウォーミングアップと呼んでいる。  軽い運動や声出しで体を温めるのはもちろんのこと、痛む部分はないか、体調は万全かを確かめる上でも重要な工程だ。  30分ほどの時間をかけてゆっくりと体をほぐす。ここまでは、選手同士で談笑する姿があるなど、リラックスしたムードが漂っていた。 「優希くん、体が重たそうですね……やっぱり体調が思わしくないのでしょうか」  ベンチから様子を観察していた笹嶋は、肩を落としていた。遠目から見ていても、優希の動きは重く鈍く、キレがない。  昨日のトレーニング中から、優希は動きに精彩を欠いていた。いまいち硬いというか、力みがあるというか、とにかく好調時の体調ではないことは明らかに見て取れた。  一晩経てばよくなるだろうとも考えていたが、それどころか今朝になって体調不良すら訴える始末である。自主トレは充実していたようだし、自信を持ってキャンプに臨んでいただけに、このつまづきがもったいないようにも思われる。
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