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「……待てよ。」
そうだ、あの祖父さんは理由もなく、無駄な事はしない。たぶんこの事も知っていたはずだ。だから、弓矢を無理矢理、持たせた。猾衷がこちらをむいた。
¨ムダダ。ソンナヤゴトキデ、ワシワコロセナイ¨
にやにやと人を小馬鹿にした笑いを浮かばせる。…たしかに無駄かもしれない。けれど、自分を信じて、弓を持たせてくれた祖父さんを裏切れない。…何より、必死に自分を庇おうとした、あの少年を見捨てられるか!
「そう思うなら、甘んじてこの矢を受けてみろ。」
渾身のちからをこめて弓を引いた。弧をえがいた矢はそのまま猾衷の肩に当たる。しかし、猾衷は又、にたりと笑った。
¨ムダダダヨ。チイサナホウシ!コンナチイサナキズデ… ?!ナンダコノヤハ!カラダガヤケル!¨
「その矢を鍛えたのは、俺の知るかぎり、最高の憑き物落しだ。」
¨オノレ、オノレ!¨
肩を押さえながら猾衷は素早く木に移り逃げて行った。
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