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猾衷が完全に居なくなったのを確認してから、おれは、少年に駆け寄った。大丈夫、外傷はないようだ。頭に触れていたら、ゆっくりと目を開けた。
「…?アヤ…カシは?」
「居なくなった。」
「きみは…だいじょうぶ…?」
「なんともない。俺の事より、お前の方が…。」
「ありがとう。」
「…?何がだ。」
礼をいうのはこちらだ。あの時、お前が猾衷に飛び掛かろうとしなければ多分二人とも、死んでいた。
「お弁当…誉めてくれた…。嬉しかったんだ。僕、いつも…一人だったから…。ありがとう…。」
「…おい!」
再び目を閉じた少年を、心配して、顔をちかずけると、静かな寝息が聞こえる。どうやら、緊張の糸が解けたらしい。
「…脅かすなよ。」
少年の寝顔を見ながら、俺は心に決めた事がある。自分の性格上決して誰にも言わないだろう。
「今度は、俺がお前を守る。」
俺は、少年をぎゅっとだきしめた。
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