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遥と呼ばれた青年は、四月一日の天敵、百目鬼 静と同じ顔をしている。それもそのはず、例のお札を書いたのが、彼だからだ。つまり、百目鬼のお祖父さんである。
「あれ?遥さん…。これって俺の夢?」
百目鬼 遥はすでに鬼籍の人で、この世には、存在しない。ただ、ある事をきっかけに、四月一日の夢に現われるようになった。
「…俺いつ眠ったんだ?」
四月一日が考えていると遥が手招きをした。
「こんな所で立ち話もなんだから、こちらへおいで……四月一日君尋くん…。」
「あ、はい。」
四月一日が遥の方に歩こうとした。しかし、おかしな事に、身体が動かない。 「あれ?なんでだ?」
動かない四月一日を見兼ねて、遥が四月一日に近付こうとする。
「何をしている。」
遥と四月一日が声のする方向を見る、と遥と同じ顔をした人物が、手に弓を持って立っていた。
「百目鬼!」
あれ?なんで百目鬼がいる?これは俺の夢じゃないのか?四月一日が考えていると、いつのまにか百目鬼の背中が、目の前に有った。
「なんだよ?」
「阿呆が。」
百目鬼が、ゆっくりと弓を、遥に向かって構える。
「お前!自分のお祖父さんに向かって何を………!」
すると、今迄なんともなかったはずの四月一日の身体に、悪寒が走る。
「なん…で?」
思わず百目鬼の背中にしがみ付き、遥を見やった。…そこには、先程の表情とは一変して醜悪な顔をした、男がいた。
「オノレ!アトスコシダッタノニ!!」
男が叫ぶと同時に、百目鬼は弓を引いた。
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