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「静も素直じゃないね。」
二人が去った寺の境内に一人の青年が立っていた。
「四月一日が、一人歩きをしていると知って、裸足で飛び出したクセに。」
昔からあの孫は、物事に対して、あまり興味をしめさなかった。ただ、私が話す事と、弓道にだけ別だった。
「彼を守るために。」
静は変わった。彼と出会い、守るべき大切なものを手に入れるため。
「しかし、あの店主も人が悪い。」
アヤカシが四月一日君を狙っているのを分かっていたはずだ。まあ、彼女の事だ。何か考えがあっての事だろう。ふと、蔵の方を見ると四月一日君の怒鳴り声が聞こえた。
「また、怒らせたな?」
やれやれ、今日も四月一日君の夢を渡ろうか。不思議な事に、孫の静ではなく、四月一日君と相性が良いのか、すんなり夢に入る事が出来る。まあ、静にとってそれも、おもしろくないのだろう。だが、私にとっては大切な事だ。この世の者でない自分にとって、二人に係われる大切な時間。再び遥は蔵を見ると呟いた。
「…二人とも、良い夢を。」
月下氷人。縁結びの仙人である、月下老と氷上人をさす。縁をとりもつ人。
月下氷人 完。
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