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自分探しの旅……か。今どきそんなことをしてる人がいるんだ。だけどそれを可笑しいとは思わなかった。この場に彼と僕しかいないからだろうか。
彼と僕しかいない、と思うのは、ここがただっ広い草原で、建物も、木も、石ころも、生き物の気配も、何も感じないからだ。
決して遮られることのない風は、音も匂いもしないで、ただ足元の草を少しだけ揺らすだけだった。なぜこんな所にいるのかは、わからない。
「君も来てみるかい?」
彼はそう言うと、また反対を向き、歩き出した。僕は返事もできないまま後を追った。
彼の自分探しの旅とやらに興味があるわけではないが、ついていくのが正解だ。と、頭のどこかが呼びかけてきた。
「どこへ行くの?」
さっきも同じことを聞いた気がする。だけどさっきとは少しニュアンスが違う。彼はそれに気がつくだろうか。
「そうだな。じゃあデパートにでも行ってみようか」
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