自分

デパート

　だがその答えを聞いても僕には結局意味はわからなかった。

「正確に言うとこのフロアに……だけどね。このフロアに商品が置かれるのはまだずっと先さ」

　少年は答える間も僕の顔は見なかった。彼の視線をたどるとエレベーターのボタンがあり、彼はゆっくりとなぞるように上ボタンを押した。

　《１Ｆ》と書かれた階数表示に明かりがつくと、音が鳴りドアが左右に開いた。
　紅い絨毯が敷かれ、レリーフの施された壁、輝くシャンデリア。
　人を乗せて上下に動くだけの箱なのに、何も置いていないこのフロアと比べると、不釣り合いなほど豪華な装飾だった。

　ドアが開ききるのを確認すると僕はそそくさと避難するように、エレベーターの中に入りこんだ。ガラスの中のマネキン達が僕を見ている気がしたからだ。