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窓から暗くなってきた空を見上げて、 ボーっとする。 さっきまで起きていたことがまるでなかったかのように、 真っ白な雲はゆっくりと穏やかに動いていた。 「武井くん」 振り返ると 少しだけ俺の教室に足を踏み入れた咲川がいた。 なんだか現実に引き戻された気分。 「あからさまに嫌な顔しないの」 クセなのか、 口に手をあててクスクスと笑う。 「一緒に帰ろう」 初めて気付いた。 俺は咲川の笑顔に弱い。 「咲川、家どっち?」 机の上のカバンをとって 歩き出した。 「武井くんの家と同じ方向」 「なんで知ってるの?俺んち」 「家は知らないんだけど、方面なら知ってるんだ。 よく帰り道見かけるから」 .
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