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足音の正体が武井くんだとわかった瞬間、
私は立ち上がって反対方向に歩きだした。
(逃げなきゃ)
ただひたすらそのことが連呼されて。
それでも思うように動かないこの足のせいで
すぐに追いつかれてしまった。
「待てよっ!」
「は…なして…」
叫ぶ武井くんにおびえるように
震えた声で答える。
(もう…いや…)
本条さんからの脅しも
グチャグチャな自分を見られた羞恥も
思うように動かない足も
もう、
どうでもよくなってきた。
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