宮沢 亮

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宮沢『はい、宮沢ですけど...なにか?』 スーツの男『宮沢様が 選ばれし者 に当選致しましたので、ご報告に参りました。』 ん?んん? 選ばれし者?ん? 選ばれし者は浮浪者の振りを... あ、それは俺が作った話だっけ。 え?何、俺が 選ばれし者なの? 宮沢『...ちょっと待ってくださいね...状況が理解出来なくて。』 頭の中を整理したら、 ひとつ疑問が浮かんだ。 宮沢『...今、当選っていいましたけど、俺 応募した覚えないですよ?』 スーツの男『あー...すいません、少し言葉のミスかも知れませんね。平たく言うと、選ばれたんですよ 宮沢様は!』 宮沢『何にですか?』 スーツの男『選ばれし者に、です。』 宮沢『えー..その、えっと つまり、選ばれし者 というのは、何が目的で選ばれた者なんですか?』 スーツの男『目的はありません。しかしながら!宮沢様は 選ばれたのです。それはとても名誉なことなのです。』 いい加減、腹が起ってきた。 なんなんだ、この男は。 なんなんだ、この男の微笑みは。 なんなんだ、この男の やたら落ち着いた口調は。 考えれば考えるほど 意味がわからなくなる。 宮沢『もう...俺はどうすればいいんですか!』 スーツの男『このガムをどうぞ。選ばれし者の証です。』 ガム。 忘れていた、大切だったはずのキーワードじゃないか。 俺はわけもわからず、その男が差し出したガムを奪いとり、 まるで逃げるかのように家に帰った。 男が、ずっと俺の背中を見て微笑んでいるような気がしたが、 振り返ることは 何故かしたくなかった。 というより 出来なかった。 何故か俺は、 男に、 ガムに、 選ばれたことに、 恐怖を抱いてしまったようだ。
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