宮沢 亮

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授業はすべて終わり、 俺は川口と一緒に学校をあとにした。 川口がとりあえずマックに行きたいと言っていたので、 二人で駅前のマックに向かった。 俺と川口はマックに向かう途中、くだらない話で笑いあっていた。 第三者から見ればカップルのようだったと思う。 しかし、 学校とマックの中間くらいまで歩いたところで、川口が急に怯え始めた。 宮沢『どーした?』 川口『..ねぇ、みやちゃん..なんかあの人、すごいこっち見てる...』 そう言いながら川口が指差した先には、 俺にガムを渡してきたスーツの男が、こっちをニヤニヤしながら眺めていた。 その瞬間、俺のいろんなものがおかしくなった。 俺はスーツの男を殴った。 理由は恐怖。 ただただ怖かった。 この幸せな現実を壊される気がしたのだ。 俺は勝手に スーツの男を「悪」として見ていた。 それは俺が勝手に作り上げた「都合の悪い物語」に過ぎなかったかもしれないのに。 それはわかっているのに俺の腕は止まらなかった。 川口は泣きじゃくって俺の肩を掴む。 そんなことはお構いなしに、 俺は殴った。 スーツの男をひたすら殴った。 男の顔からは大量の血が流れ出ている。 血を見て冷静になった俺からは、涙が止まることはなかった。 男は死んでしまった。 男を殺してしまった。 俺は悲しくて、申し訳なくて、 男から貰ったガムを食べた。 ミントの味がするガムだった。 そして俺はガムの包み紙をよくみて、 驚愕した。    
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