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涙で濡れた顔を、ハンカチで隠しながら振り返ると、キヅキが私を見下ろしていた。
「さや…、大丈夫?」
抑揚のない声で、キヅキが尋ねてくる。眉根を寄せ、目に溜まった涙がこぼれないように、堪えているのがわかる。肩に乗せた彼の手は、とても熱い。
キヅキもつらいのだ。
いや、違う。
私なんかより、キヅキの方がずっとつらいはずなのだ。
死んでしまった葵とキヅキは、中学生からの友達。時には、恋人だったこともあった。
それなのに、私を心配するキヅキ。
この人はいつだって、優しすぎる…。
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