離れ離れになった、彼と彼女。

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私はキヅキの問いに、何も答えることができなかった。 口を開いたら、しゃくり上げてしまいそうで。言葉と一緒に、嗚咽が溢れ出してしまいそうで…。 「みんなもあっちにいるから。さやも行きな。」 キヅキが指差す方を見ると、会場の隅に、遣斗と陸がいた。 私はうなずいたけど、いつも感情を表に出さない陸が、歯を食いしばり、顔を歪めて泣いているのを見て、行くのをやめた。 彼らと何を話せばいいのかわからない。 何を言っても、どんな顔をしても、きっと私達の悲しみは消えない。 私は、外の空気を吸いに行こうと足を踏み出した。 すると、キヅキの足音も、後ろから続いて響くのが聞こえた。
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