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大学に入学してから1ヶ月が経った、5月のある日のことだった。
私は木々の緑が眩しいキャンパスを、サークルの活動室に向かって歩いていた。
これから、私たち新入生のサークル入会祝いにと、先輩たちが軽い歓迎パーティーを開いてくれるという。
入学式の日から数週間、新入生は先輩たちから、幾多のサークル勧誘という洗礼を受ける。
私も例外なく声を掛けられ、校門から講義室に辿り着くまでの間に、抱えきれないほどの勧誘のビラをもらった。
サークルの活動費を得るため、サークルを存続させるために、先輩たちは必死なのだ。
たくさん勧誘された中から私が選んだのは、旅行サークルだった。
旅行好きの学生が集まって、講義が休みの時期に国内外へ一緒に旅をする、というもの。
もちろん、旅は練習などできないから、普段の活動は飲み会がメインになる。
これまで旅行なんて、家族と夏休みにたまに行くくらいだったけれど、勧誘してくれた4年生の女の先輩が、包み込むような穏やかな笑顔で、フランスやイタリア、はたまたインドやタイに行った話を聞かせてくれて、このサークルに入ることを決めた。
きっと私は、
『先輩のように世界を旅すれば、先輩のように魅力的な女性になれるんじゃないか』
と考えたんだと思う。
ついさっきまで制服を着た高校生だった私の目に、4年生の先輩は、女の私でもドキドキしてしまうような、そんな大人のお姉さんとして映ったのだった。
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