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「いいから早く金出せや!ゴルァ!!」
「いや、ですから、今はホントにお金持ってなくて――「早く出さねえと鼻に穴あけるぞゴルァ!!」
「……あいてるけど」
「ああぁん!?」
近い、顔近い。
朝から不良に絡まれる俺、笹浪昴。
登校中、下駄箱で上履きに履き替えていると、
いきなり声をかけられて裏庭に……そしてこれである。
普段、不良どもを下に見ていても
自分がターゲットにされると不良どもではなく自分が下になってしまう。
「金だ金!お前の金を俺に金で俺は金だ!」
「どんだけ金なんですか!?」
最終的に不良が金になったぞ、おい。
「いい加減に舐めた口利くとホントに痛い目に――
「あー、あのさー」
時間が止まった気がした。
「あん?」
「我が校で風紀を乱さないでくれるかな?」
いや、止まったのは時間ではなくて世界なのだと感じたのかもしれない。
不良のドスのきかせる声に割って入ったのは
ダルそうな、別の言い方をすると興味無さげなといった
男にしては高めな、女にしては低めな声。
この声の主は全校生徒誰一人知らない者はいないだろう。
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