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幼き記憶
「あなたは宝……私の宝……」
少年を愛おしむような優しい眼差しで見つめる女性がいた。
そして、少年の横で女性をじっとみつめる少女がいた。
女性はその視線に気づくと、そっと少女の頬を撫でながら、微笑んだ。
しかし、その笑みには悲壮感が漂い、瞳の奥には、静かな決意が垣間見られた。
夕暮れの紅い光が差し込む中で、辺りにある草原の葉がこすれ合う音が静かに響いている。
女性達は、背丈ほどある草に身を潜め、息をこらしていた。
少年と少女は、女性の子供。
三人は親子であった。
母親は、引きつらせた笑顔で、子供二人を励まし続けたが、その余裕もなくなってきた。
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