1章 僕と諒

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あの瞬間。 諒が笑って手を離した瞬間。 諒の身体が傾いてく瞬間。 脳裏に焼き付いて 何度も何度も思い出される。 僕は諒が自殺したとは思えなかった。 あいつ、笑ったんだ。 (おれらは 幸せになるんだ) 諒はほんとに死んだのだろうか。 「…うっ 諒おぉ…!」 僕は力を振り絞って立ち上がり、校庭へ駆け出した。 上履きのまま校庭に出たところで、先生達と鉢合わせた。校舎のほうに戻ってくる。 もう慌ただしさもなく 静かにあるいてやってきた。疲れたような顔をして。 「先生? 諒は…」 息を切らして僕は聞いた。 しかし先生は答えずに質問した。 「相田 、津笠が落ちたことは誰かから聞いたものなのか?」 「違います!僕がこの目で… 目の前で諒が…」 僕はそう言うと先生はうーんと唸った。 他の先生達は校舎に戻っていく。 ど、どうして先生達は落ち着いちゃってんだ? 生徒が飛び下りてんだぞ! 「先生!?諒は…!」 「津笠はいないよ 校舎のどこにも…」
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