1章 僕と諒

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「相田 直です…」 坂井は薄く笑むと、僕の肩を突き飛ばした。 「痛…!」 僕は、もうひとりの標的の彼の近くの壁に背を打った。 彼は坂井の仲間数人から、ボコボコに蹴られている。彼は痛みに呻いている。 こんな状況、僕は初めてだった。 (だれか 助けてくれ…!) 「おいおまえら、そいつはもういいや。こいつで遊んでやろーぜ」 坂井の言葉に、僕はギクリとした。みんなこっちを向いた。 「や…やめて!」 「なんだそら、女みてーなやつ!」 坂井達はばかみたいに笑った。 そのときだ。 「おまえらあああ!死ねえええッ!」 隣で声が飛んだ。 坂井達はぴたりと笑うのを止め、僕の隣の彼を見た。 「ああああああああ!」 彼は立ち上がり声を張り上げて、坂井に向かって行った。 それはスローモーションのように見えた。 彼の拳は、坂井の顔面に命中した。 坂井はよろけた。 顔をあげた奴の顔は、ものすごい形相だった。 彼は坂井の仲間達にも突っ込んでゆく。 しかし、すぐに腹を蹴り飛ばされ、壁に頭を打ち付けた。 「こいつ…!殺してやろうかあ!」 坂井は彼を睨んで叫んだ。 彼もまた負けずに睨んでいた。 仲間の一人が言った。 「まて…サカ!先生に気付かれたっぽいぜ」 確かに足音がした。 革靴の響いた音は、怖い理科の先生だ。 コツン… コツン… 「チッ」
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