1章 僕と諒

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坂井は未練がましそうに彼を睨んでから、その場を去った。仲間らは慌ててついていく。 廊下の向こうに小さくなってゆく坂井達の姿を、僕は見詰めていた。彼も見詰めていた。 「…死ねよ」 壁にもたれ掛かる彼が、坂井達の背中に向かって憎そうに呻いた。 服は足跡で汚れている。狂暴に光っていた瞳は、もう力を失せていた。 こいつ、坂井の仲間に殴りかかった時、強く頭を打ったはずだ。 僕は腹を押さえながら、彼のもとに歩いた。 う…腹が痛い。 それからこいつ―― 「…君だいじょうぶ?」 僕は声をかけた。 「あいつら、すっげー腹立つ」 彼はそう言った。 「うん……」 「絶対 仕返ししてやる…」 僕は度肝を抜いた。 僕よりボロボロなくせに 僕と同じ、体格がいい方じゃないのに、 坂井に勝てそうな気がした。 こいつ――すげえつえー奴だ。 「…立てる?」 彼は大丈夫と行って立ち上がろうとしたがよろめいて、僕は慌てて支えた。 「保健室行ったほうがいいよ」
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