1章 僕と諒

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「あの人、今日休みだけど」 A組の生徒はそう言った。 「え!?それって…風邪?」 「怪我だって。詳しくは知らないけど」 「そうか… ありがとう」 僕は教室を後にした。 怪我って… 怪我ってなんだよ。 坂井にやられたのか…?あいつ…。 諒に会ったのは、翌日の昼休みだった。 お弁当を下駄箱のとこに忘れて取りに行ってきたところで、階段のところですれ違った。 「諒!」 「あ、直」 振り返った諒の頬に湿布が貼られていた。口元には痣がある。片目の瞼は少し腫れていた。 僕が口を開くより先に諒が口を開いた。 「あ、おまえそれって弁当?」 「えっ?あ、うん」 僕は拍子抜けした。 すると諒は「すまん!」と言って両手を合わせて頭を下げた。 「ちょっとでいいから、弁当分けてくれ!おれ、弁当も金も無いんだ!」 「えっ?ちょ…諒?」 「腹が減って死にそうなんだよ…」 上目遣いで必死に頼まれてきた。しかもそんなボロボロな格好したやつに、さすがにNOとは言えなかった。 「えー…しょうがないなあ…」 と言うと、諒は跳びはねる勢いで喜んだ。
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