1章 僕と諒

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別々のクラスの僕らは 教室で食べる訳に行かず、その場から近くの調理室に忍び込んだ。 諒は左足を引きずりあるいていて、座るときには椅子を並べて 左足を置いた。 「あのさ 怪我で休んだって…」 僕は聞いた。諒は弁当の中身を物色している。 「ん たいしたことねぇよ。この卵焼きもらっていい?」 諒は箸を抜き出した。 「いいけど…」 卵焼きに食いついた諒は、至福な表情を浮かべた。 「んまい!」 なんだか、心配する僕がまるでばかみたいだった。 「おまえ、坂井にやられたんだろ?」 僕はきっぱり聞いた。 諒は黙々と弁当を食っている。 「人の弁当なんだから 少しは遠慮して食えよ…」 「あとでなんかおごるよ」 諒はうわのそらで言った。 「おごるって…金無いんだろ?」 「ああ…坂井に盗られた」 諒はご飯の塊を押し込んで言った。 …やっぱり、また坂井にボコられたのか。 「この前のおかげで、坂井に毎日喰らってる。ガキみたいな悪戯とかさ。クラスじゃおれが坂井に目ぇ付けられてんのバレてっから、誰も近寄んねー」 諒はむしゃむしゃ弁当食いながら、辛そうな雰囲気一切出さなかった。 それは強がってるだけだって、僕は分かった。
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