1章 僕と諒

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「…いいよ 弁当やる」 僕は言った。 諒は驚いたかおして箸を止めた。 「おまえ、腹すかしてぶっ倒れるぞ」 「う、うるさいな、おまえが汚く食うから 食う気失せたんだよ」 すると諒は僕を見て 吹き出した。 「ぶははは!」 「なんだよ!」 「あはは!直、おまえって面白い奴!」 「はあ!?」 どこが面白いってんだ!と言い返そうとしたとき、諒は咳込みだした。ご飯が気管に入ったらしい。 涙目になって落ち着いたころ、諒のテンションはがた落ちした。 「食ってる最中に 笑うもんじゃないな」 「僕をばかにした罰だよ」 今度は僕が 可笑しくて笑った。 「ま、これもあれだよな」 諒は笑わなかった。神妙なかおして、食べかけた弁当を見詰めた。 「これも 坂井のせいだ」 僕は笑うのをやめた。 “坂井”のワードが出ると、諒の表情がくるっと変わる。 「おれ やっぱあいつ 許せねー」 諒は唸るように言った。よほど 坂井が大嫌いなのだろう。諒の瞳は、弁当を睨み殺しそうだった。 「さ…坂井なんてほっとけよ。構うから虐めんだ」 「………」 「それに 坂井の実家、道場だぜ。あいつ空手つえーんだ… 体格的にも勝ち目はない」 僕は、小学生の頃の坂井を思い出した。 なにか気にくわないことがあると すぐキレて、彫刻刀投げたり 窓ガラス割ったり、低学年を虐めたり… 加減てものをしらない奴だった。 今だって 諒に学校を休むような怪我を負わせたのだ。 「おれがあいつを恨んでんのは ただリンチされただけじゃねえ」 諒は弁当を睨んだまま 箸を持った。
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