1章 僕と諒

16/39
前へ
/65ページ
次へ
「弁当忘れたやつがチビだっての」 と 智は訳分からないことを言う。 僕の身長は平均値である。 「は?」 「弁当忘れるようなやつの脳みそがチビだっての」 智は生意気に言った。 ほんとにこいつ、昔から生意気なやつだ。 「でも 僕弁当忘れたわけじゃないからな」 「なんだ食わないだけかよ?」 智は目を細めた。 「違う。A組の津笠に食われたんだよ」 あげた なんていえなくて、あたかも僕は 諒に勝手に食べられたみたいに言った。 「無茶苦茶だなあ、ソレ」智は笑った。「津笠ってあの坂井に目ぇ付けられてるやつだろ。あれといるとろくなことないって、小川が言ってた」 「諒は悪いやつじゃないよ」 諒と面識のない智にそう言われると、なんだか腹が立った。 「でも」と智は言った。「小川の友達が 用があって津笠といたら 坂井のグループに鉢合わせて あいつ関係ないのに殴られたんだ。鼻血が出たってよ」 「鼻血がなんだってんだ。悪いのは坂井だろ?」 「だけど津笠だって 坂井に目ぇ付けられるようなことしたんだろ?」 「悪いのは坂井だ!」 僕はきっぱり言った。 智はむすくれた。 「…おれ しらねーからな」 智はみんなのほうへ走ってった。 あいつの背中を追うように、僕の腹の虫が虚しく鳴いた。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加