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それから諒の姿を見掛けるたび、いつもどこかしら痛そうで、ひとりだった。でも諒のことだから弱ったような顔をしない。
あれを見ると、僕が泣きそうだった。
あいつの強さは…あいつがずっと坂井に引き下がらないのは、きっとあの…
――あいつ、おれのばあちゃんを馬鹿にしたんだよ。
諒のばあちゃん。
一体、坂井と諒のばあちゃんになにがあったんだろう。
ていうか 人のばあちゃんに会うことなんて滅多になくないか?
「――諒」
廊下の先をゆく諒の背中を見付け、一瞬戸惑ったが 僕は声をかけた。弁当の時以来であって、ちょっと緊張した。
放課後に会うのは珍しかった。
「直…」
振り向いた諒は 元気がなさそうだった。
諒らしくない。
「帰るのかよ?」
僕は聞いた。
諒は はらはらと首を振った。
廊下の空いた窓から風が入って、諒の髪が揺れた。
僕は諒のそばの窓際に寄って 外を見た。
同級生が友達同士固まって 笑いながら下校してんのが見えた。
「直。放課後はよく坂井が来るから はやく帰ったほうがいい」
諒が言った。警告するような響きじゃない。どこか“帰らないの?”とたずねてくるみたいだった。
僕はまだ窓の外の風景を見ていた。
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