1章 僕と諒

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それから諒の姿を見掛けるたび、いつもどこかしら痛そうで、ひとりだった。でも諒のことだから弱ったような顔をしない。 あれを見ると、僕が泣きそうだった。 あいつの強さは…あいつがずっと坂井に引き下がらないのは、きっとあの… ――あいつ、おれのばあちゃんを馬鹿にしたんだよ。 諒のばあちゃん。 一体、坂井と諒のばあちゃんになにがあったんだろう。 ていうか 人のばあちゃんに会うことなんて滅多になくないか? 「――諒」 廊下の先をゆく諒の背中を見付け、一瞬戸惑ったが 僕は声をかけた。弁当の時以来であって、ちょっと緊張した。 放課後に会うのは珍しかった。 「直…」 振り向いた諒は 元気がなさそうだった。 諒らしくない。 「帰るのかよ?」 僕は聞いた。 諒は はらはらと首を振った。 廊下の空いた窓から風が入って、諒の髪が揺れた。 僕は諒のそばの窓際に寄って 外を見た。 同級生が友達同士固まって 笑いながら下校してんのが見えた。 「直。放課後はよく坂井が来るから はやく帰ったほうがいい」 諒が言った。警告するような響きじゃない。どこか“帰らないの?”とたずねてくるみたいだった。 僕はまだ窓の外の風景を見ていた。
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