1章 僕と諒

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「センパイをそんな目で見ていいのかぁ?」 坂井は目付きを悪くして…もともと悪いが…薄ら笑いを浮かべながら ずしずしと諒に接近した。 体がでかい坂井は 諒を見下す高さだ。 だけど諒も 負けずに目からビームの態勢をキープしている。 「生意気だ」 坂井は唾を吐くように言った。 「また遊んでほしいのか」 「………」 「しょうがないなァ まーこチャン」 坂井は 高らかに言ったあと 今度はほんとに諒の頬に唾を吐きかけた。 べっとり付けられた諒の頬はピクリと震え、口を歪め さらに憎々しげな顔をした。 こんなの こんなの最低だ…! 「やめろよ!」 勇気を振り絞って 僕は声を上げた。 坂井と諒は僕の方を見た。 「ああ?」 坂井の口元が じわじわ広がっていった。 「直!おまえ 早く帰れ!」 諒は目を見開いて 早口に怒鳴った。 「諒を置いて帰れるかよ!」 僕は即座に言い返した。 すると坂井は 僕のほうへ寄った。 「…!」 「きもちわりー友情ごっこしてんじゃねーよ」 坂井は唸った。その右手はにぎりしめられている。 あの腹パンチを思い出して、僕は歯を食いしばった。 「気持ち悪いのはそっちだ!」 諒が声を上げた。 そして 坂井の注意が僕から諒に移ろうとした瞬間 諒のパンチが坂井の頬に命中した。
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