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「つ!」
坂井はよろけた。
…すごいよ!諒 ナイス!
だがそう思った瞬間に 坂井は目を見開いて鬼のようなマジの顔して 諒に殴り掛かった。
「諒!」
坂井に殴られ襟首を掴まれた諒は 鼻血を垂らしていた。
「いい加減歯向かうのやめろよ」
坂井は低くそう告げて、諒の顔にもう一発殴りを入れた。
諒の鼻血が2、3滴飛んで窓ガラスについた。白々しい曇り空をうつす窓に、血の赤は不気味なくらい映えた。
「…ばあちゃんに謝れってんだよ」
それでも諒は諦めずに言った。
「まだ言うか!」
完全にぶっキレてる坂井は怒鳴って、また拳を振り上げる。
僕は見ていてたえられなかった。
涙が溢れてくる。
止めに入りたい、だけど僕ひとりじゃ坂井に勝てるわけがない。いや――本当の理由は…すくむ足が震える…僕が弱虫なだけだ。
目の前で、ばあちゃんに謝れと訴える諒は坂井に無惨に殴られる。
やめて…
やめて……!
誰か助けて…!
心の内で叫ぶしかなかった。
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