1章 僕と諒

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「つ!」 坂井はよろけた。 …すごいよ!諒 ナイス! だがそう思った瞬間に 坂井は目を見開いて鬼のようなマジの顔して 諒に殴り掛かった。 「諒!」 坂井に殴られ襟首を掴まれた諒は 鼻血を垂らしていた。 「いい加減歯向かうのやめろよ」 坂井は低くそう告げて、諒の顔にもう一発殴りを入れた。 諒の鼻血が2、3滴飛んで窓ガラスについた。白々しい曇り空をうつす窓に、血の赤は不気味なくらい映えた。 「…ばあちゃんに謝れってんだよ」 それでも諒は諦めずに言った。 「まだ言うか!」 完全にぶっキレてる坂井は怒鳴って、また拳を振り上げる。 僕は見ていてたえられなかった。 涙が溢れてくる。 止めに入りたい、だけど僕ひとりじゃ坂井に勝てるわけがない。いや――本当の理由は…すくむ足が震える…僕が弱虫なだけだ。 目の前で、ばあちゃんに謝れと訴える諒は坂井に無惨に殴られる。 やめて… やめて……! 誰か助けて…! 心の内で叫ぶしかなかった。
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