1章 僕と諒

22/39
前へ
/65ページ
次へ
そして10分くらい経っただろう…坂井の手が止んだのは 予鈴の音だった。 諒は床に俯せに倒れ込んでいた。 坂井は鼻息荒く諒を蹴りつけてから「この辺にしてやる」と唸った。 僕の心は逆立っていた。 …許せない。 坂井が怖い…けれどその気持ちは ずっと怒りと競っていた。 そして今 怒りが恐怖に勝ったのだ。 …許せない。 心臓がドキンドキンと打った。 頬を濡らす涙はそのままに、僕は坂井の背中を睨みつけた。 視線に気付いてか、坂井は僕の方をみた。 「早く帰りな 直チャン」 坂井は笑わずに告げた。そしてポケットに手を突っ込んで 坂井は去って行こうとする。 諒は苦しげに唸った。 諒…。 僕――協力するって言ったよな…! なにもしないで突っ立って怯えて そんなんで… 「終われるか――!」 僕は坂井の背中に駆けて言った。 拳を握りしめて、坂井の横っ面に一発決め込もうと力んだが… 坂井は呆気なく僕の渾身のパンチをかわした。 「…っうわ!」 僕は勢いづいて 床へすっ転んだ。 「あはは!なんの真似だよ!」 坂井はばか笑いした。 「……直…」 諒が目を見開いて僕を見た。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加