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――だめだ。僕ってば カッコ悪い…。
「パンチの練習しとけガキ」
坂井はそう吐き捨てて 去っていった。
行ってしまう。
「このやろう…覚悟しとけよ…」
坂井の姿が廊下の向こうに こんなに小さくなったころ、僕はその背に言い返した。
「…聞こえてねーよ。そんな遠くに」
諒は鼻筋を痛そうに触れながら、ゆっくり起き上がりやんわり言った。
「………」
僕は坂井の米粒みたいな影を、ただ廊下の真ん中に突っ立って見ていた。
「直、ティッシュ持ってない?」
「…………」
「先生に見られたらめんどくさいな… おれたちも行こう…」
「…………」
「…直?」
「……う ぅう…」
込み上げるものは抑えきれなかった。
「……」
諒は僕のそばへ歩み寄った。
「…おい まだ泣いてんの」
諒は心配げな口調で話しかけた…が、それは最初のわずかな一瞬だけで 僕の顔を見た途端、すぐに笑い出した。
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