1章 僕と諒

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鼻をかみおわって諒の方をみると、諒の洗い流した顔は鼻を中心に赤くなっていた。鼻血はまだ止まっていないらしく、トイレットペーパーの塊を当てていた。 気付けば、諒の服だって血が付いている。 「諒…大丈夫?」 「ああ 鼻血だけ。折れてねーし」 諒はなんだか鼻血に慣れてるみたいだった。 「上着…おれ今日持ってこなかったっけなあ」 僕に頼み込んでんだか、独り言なのか、よく分からない口調で、諒は血の付いたブラウスの裾を引っ張った。 確かに あんまりさらけ出して歩きたくないものだ。 「まあいっか。おれん家まで結構田舎道だしさ」 どっちにしろ僕は思った。 「それ 一番見せたくないのは母ちゃんだよな。諒の母ちゃん心配するだろ」 「心配ないよ」 「PTAに殴り込みとかしない?」 諒は笑った。 「しないよ。おれ 母ちゃんいないもん」
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