1章 僕と諒

26/39
前へ
/65ページ
次へ
僕はその後 諒のかばんを取りに付き合った。 諒の言った言葉の意味が 一瞬わからなくて、僕もあははと笑いながらスルーしそうになった。 「えっ!?」 僕は目を丸くした。 「別に大袈裟なことじゃないよ。母ちゃんいないの小さい時からだし。見られたら面倒臭いのは、ばあちゃんだなあ」 諒は笑って言ったけど、顔はあんまり笑ってなかった。 「ばあちゃんて…坂井がばかにしたっていう…例のばあちゃん?」 「ばあちゃんはひとりしかいねーだろ!」 諒は可笑しそうに僕を小突いた。 だけどすぐにまた 笑顔が消えた。 ちょっとした沈黙。僕らの足音が変に大きく聞こえる。 僕が知りたげに諒を見つめていると、諒は目を伏せて口を開いた。 「占いやってんの。おれのばあちゃん」 「占い?」 「そ。うち貧乏だから、父ちゃんの収入じゃやってけなくて、ばあちゃんも働かざるおえなかった。ばあちゃん病気であんま動けないから、だから占い」 「…へぇ…」 不意な重たい話を、僕はどういう風に聞けばいいのか 分からなかった。 「うちでやってんだよ。“占い処津笠”って古臭い名前でさ」 「すごいな、それ。家が占い屋かよ」 どうにも 諒ん家の建造の想像がつかなかった。 諒は少しだけ へらっと笑った。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加