4人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はその後 諒のかばんを取りに付き合った。
諒の言った言葉の意味が 一瞬わからなくて、僕もあははと笑いながらスルーしそうになった。
「えっ!?」
僕は目を丸くした。
「別に大袈裟なことじゃないよ。母ちゃんいないの小さい時からだし。見られたら面倒臭いのは、ばあちゃんだなあ」
諒は笑って言ったけど、顔はあんまり笑ってなかった。
「ばあちゃんて…坂井がばかにしたっていう…例のばあちゃん?」
「ばあちゃんはひとりしかいねーだろ!」
諒は可笑しそうに僕を小突いた。
だけどすぐにまた 笑顔が消えた。
ちょっとした沈黙。僕らの足音が変に大きく聞こえる。
僕が知りたげに諒を見つめていると、諒は目を伏せて口を開いた。
「占いやってんの。おれのばあちゃん」
「占い?」
「そ。うち貧乏だから、父ちゃんの収入じゃやってけなくて、ばあちゃんも働かざるおえなかった。ばあちゃん病気であんま動けないから、だから占い」
「…へぇ…」
不意な重たい話を、僕はどういう風に聞けばいいのか 分からなかった。
「うちでやってんだよ。“占い処津笠”って古臭い名前でさ」
「すごいな、それ。家が占い屋かよ」
どうにも 諒ん家の建造の想像がつかなかった。
諒は少しだけ へらっと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!