善意vs悪意

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障子へ掛けた指は大きな手に包まれ、反転した体は温かい胸に引き寄せられる。 「もう行くのか? なら少しだけこうさせてくれ。」 回された腕に心地好い力が加わり、真生はされるがまま暫し温もりに埋もれた。 短い時間だったが幸せを満喫し、歳三は一旦離れ軽い口付けを落とす。 「お前ぇを早くここから出してぇ。 くくっ、これに関しちゃ俺だけが焦ってるみてぇだな。」 頬を染めて首を傾げる真生を解放し、一人になると元いた文机の前へ座り直した。 残った執務へ戻り紙に筆を滑らせつつも、先程自ら口にした焦りの要因を脳内で辿る。
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