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それまで同年代の友達や周りに歌を褒められたことがない美雨。
だから事務所の人にどれだけ褒められようと、どれだけCDが売れようと…美雨は自分の歌の魅力に気付くことができない。
どこか他人事のように感じてしまうのだ。
そしてその自信のなさが、今美雨の中で大きな迷いとなっている。
「そうか。しかし、そんな世で歌い手を生業としている美雨どのの歌はさぞかし素晴らしいものなのであろうなぁ…。」
「っ…そんなこと!!
…私には自分が歌う意味が見出だせないんです。
育ててくれているおじいちゃん達に迷惑をかけないように…少しでも稼げればって歌い始めて……。
ほんとにそれだけなんです…。
なのにどんどん話が大きくなってしまって……こんなことになると思ってなかったから怖くて…。」
自分に期待するかのような恭太郎の言葉に、美雨は今まで誰にも伝えることのなかった不安を吐き出すように口にする。
早紀との舞句のくだりに晴れやかだった心も、すっかり曇ってしまっていた。
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