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「…美雨どのは歌うのが嫌いなのか?」
「歌うのは…好きです。」
「それだけではいけないのか?」
「駄目なんですっ……歌手をやるからには何か意味が欲しいんです。
私の歌をみんなに聞いてもらう意味が…。
こんな空っぽな歌なら歌手として歌う必要なんかない…。
私はそれが怖いんです。」
言いながら美雨は分かっていた。
自分が凄く贅沢なことを言っていると。
歌手になりたくてもなれない人は大勢いるし、それに比べて自分は恵まれている。
歌手を始めてたった二年でここまで売れるようになっているのだから。
しかしだからこそ。
歌手になりたくてもなれない人達の気持ちの上に立ち 沢山の人達に聞いてもらっているからこそ、美雨は不安や迷いを抱えたまま歌手を続けたくないのだ。
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