髪結

10/10
前へ
/170ページ
次へ
「さぁ、美雨様。今日は吉原の大門の辺りまで足を伸ばして参りましょう。」 「あ、はい!!ってゆうかまた"美雨様"になってますよ」 「あら、本当でございますね。」 二人は笑い合いながら、歩を進めた。 周りからは相変わらず美雨に好奇の視線が向けられている。 少し落ち着いた美雨も、やっとその視線に気付いたようだ。 「早紀さん…やっぱり私目立ちます? なんかみんな見てるし」 自分に向けられる視線に 居心地の悪さを感じ、早紀に尋ねる。 「美雨の髪の色は珍しいですからね。 大丈夫、物珍しく思われるのは最初だけでございます。 現に早紀はもう慣れました。」 笑って返してくる早紀に美雨は少し安心した。 "もう慣れた"という言葉にも、早紀との距離が縮まった感じがして嬉しくなる。 (ほんと早紀さんといると心強いなぁ。 早紀さんが着物を貸してくれたり 髪を結ってくれなかったら、もっと目立っちゃうところだったもんね。 ありがとう早紀さん。) 綺麗に結われた自分の髪にそっと触れ、美雨は心の中で深く感謝した。   
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

414人が本棚に入れています
本棚に追加