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「よしづきだゆうさん……なんて綺麗な人…」
思わずポツリと呟いた瞬間、二階の美月と目が合った。
品定めをするかのような目付きで見下ろす美月だが、美雨は目を反らせないでいた。
そのまま30秒程経っただろうか。
開いた時と同様、突然窓が閉まる。
閉まりきる直前 美雨の目には美月の口元に微かな笑みが浮かんでいるように見えた。
フッ-
美雨は呼吸を忘れていたかのように息を漏らした。
周囲は美雨の存在など忘れたかのように、美月の話に興じている。
「帰りましょうか美雨。人目も引いたようでございますし。」
「はい…。」
美雨はまだ先程の衝撃に捕われていたが、元来た道を歩き出す早紀の後ろを無言で着いて行った。
(吉原一の花魁…よしづきだゆうか……)
これが美雨と美月との出会いであった。
この先 美月と関わることになるとは、今の美雨には知る由もない。
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