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青希はホームに存在する、寒さを防げそうな物をかき集めた。
理由は、外に出るためである。
戦争が終わって初めての夜。
この地下80mにまで、夜の寒さが流れ込んできた。
故に、外にあるまだ無事のビルに移動するため、布やブルーシートを集めていた。
勿論、妹のために。
外にいる時間は一分もないが、短時間でもあの寒さに紅音がさらされたら、命に関わってしまう。
故に、できるかぎりの防寒対策を妹に施さなければならない。
ふと、紅音の顔を見る。
すき間から吹く風が紅音の体を冷やし、紅音は眉を八の字にした。
苦しそうな息が青希の耳に届いた。
それを聞き、青希の手は汗に濡れ、焦った。
妹をおぶり、地上に行くため、500段の階段を上りはじめた。
青希の疲れ果てた吐息と、紅音の苦しそうな吐息が、奇妙な音色を出している。
「頑張れ紅音……保ってくれ」
「…ぃ……ゅ…ぁ……」
何と言っているかはよく分からない。
無理にしゃべんなくていいよ、と青希は紅音に話しかけた。
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