『兄妹』

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氷点下35℃。 今日の東京平均気温。 核兵器による雲が原因で、太陽光が遮られているためである。 現在東京人口二万4000人。その大半は西暦2050年に東京湾を埋め立てられ造られた最先端科学街、『国立科学都市』に避難していた。 第三次世界大戦を生き延びた一組の兄妹も、ここに避難していた。 兄の高城 青希〈コウジョウ アオキ〉16歳はいま科学都市の地下街に来ていた。 荒らされた無人の売店。 青希は僅かに余っているガムと水を手にした。 今回の食料収集は成功か失敗かと言われれば前者だ。二万を超える人間ができるかぎりの食料を確保しようとしているため、もう余っている食料は皆無に近いのだ。 青希はガムと水をポケットに入れ、妹―――高城 紅音〈アカネ〉の待つ、さらに地下にある駅のホームへ駆け降りた。
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