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ホームの隅に座っている紅音は衰弱しきっていた。
こちらに向かって走ってくる兄を紅音の瞳は捕らえた。
しかし優しい兄に『おかえりなさい』と言う体力はない。
紅音は僅かに微笑み、兄を迎えた。
PM11:00。
青希はりんごにかじりついた。
熟していないりんごは味が薄く、美味しくはなかった。
だがこの状況、環境でこの味は上出来と言う他無かった。
青希が剥いたみかんを一房、紅音は口に含んだ。
口に甘い香りが広がる。
「………ぃ」
「?」
紅音が何かを喋ろうとしているのは分かる。
ただ何が言いたいかは分からない。
青希は妹の頭に優しく手を置いた。
妹は少し微笑み、ゆっくりと眠りについた。
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